長らく続いた旅の大部分は終わった。しかし、旅は家に帰るまで続くものである。
鈍行にてほぼ5日かけて進んだ行程を、たった半日ほどで帰る。
安定のドーミーイン
この日は朝9時に起きた。ずっと朝5~6時に起きていたものだったから、目覚ましをかけずに寝れる開放感、あっぱれ。
さながら「社会人の休日」たるものを、疑似体験することになった。
なお、この日泊まったのは昨年夏と同じ「ドーミーイン稚内」。北の果てでも内地と平準化されたサービスを受けることができるのは、やはり素晴らしいと感じた。
ドーミーインは、屋上に露天風呂設備を用意しているのが特徴的。
今回もそれに行ってみようとした。
が、外気温はおよそマイナス10℃。凍てつく風が全裸に刺さり、5分とて外に居られなかったのはいい思い出となった。
稚内駅(10:30)→稚内空港(11:00)(11:45)→新千歳空港(12:40)
こうも気温が低いと、笑い事では済まなくなることも、ある。
稚内から神戸に帰るには、皆さんの予想通り、どうにかして新千歳空港までたどり着く必要がある。
稚内→新千歳までの道のりにはJR特急(陸路)、飛行機(空路)の2種類があるが、前者が約6時間・12000円ほど掛かるのに対し、後者はなんと約1時間・15000円ほど。
どう考えたって、飛行機が効率的なのは自明である。だからこそJRが赤字なのかもしれない
しかし、気温が氷点下まで下回ることもザラにある、“試される大地”北海道。飛行場付近が吹雪けばそのフライトはチャラとなる。
この日は奇跡的に、予定通りフライトできることになった。とはいえ、事前に空港のサイトで確認するのをおすすめする。
稚内に別れを告げる。
こここそ、次来るのはいつになるだろう。もう来ないかもしれないし、近いうちにまた来ているかもしれない。
旅とは気まぐれである。
稚内駅から空港まではバスで移動。大人1人700円と、ちと高い。
海岸線を通るので、バスの左側に座れば…雄大な宗谷湾の車窓を楽しむことができる。
空港で見つけた、稚内らしい1シーン。
次稚内に来るとしたら、樺太か利尻島に行きたいわ。
千歳へ
飛行機は無事、時間通り新千歳に到着。
自分のお金でANAに乗ることは初めて。こうした1流のサービスは、一種の自己投資だと思って積極的に体験したい。
空を見ると天気が良さそうだけど、現地は体が吹っ飛びそうなほどの爆風であった。急いでターミナルへ身を隠していく。
千歳。ちとせ。「ちとせあめ」などがあるように、北海道の地名としては珍しく、和名である。
付近には支笏湖(しこつこ)という大きな湖がある。アイヌ語である「シコツ」というのは「大きなくぼみ」という意味だそうで、それにより千歳一帯はシコツ場所と呼ばれていたそうな。
江戸時代末期、シコツに変わる地名の命名を頼まれた箱館奉行が、シコツ一帯に数多くの鶴が生息していたこと、「鶴は千年(歳)、亀は万年」という縁起のいい故事をひっくるめて、千歳と名付けたそうである。
サケのふるさと
このまま神戸空港行きの飛行機を待ってもよかったが、行ってみたい場所があった。前回の北海道旅のあと、その存在に気付き後悔した場所。
それが「サケのふるさと 千歳水族館」である。
本州ではスーパー以外では馴染みのない、サケという魚。その大枠である「マス」科という魚種は、海で大手を振っているスズキ科とはまた違った魅力を放ってやまない。
そのマス科の魚を、日本で一番大きく扱っている水族館が、ここ千年にある。
新千歳空港に降りたら、そのまま札幌に向かう人が大半だろう。しかし、わざわざ千歳駅で途中下車してまでここに行く価値はある、と思う。
千歳駅への帰り道、「Gallerry Live Art」という画廊を見つけたので入ってみた。
すると、そこはシニア世代の数人の男女が語り合う場所で、肌にビリビリくるアウェイ感に正直「やっちまった」。
凄まじい場違い感にたじろいだものの、気さくに話しかけてくださり一安心。
「内地の研究者が、『この水族館は綺麗で素晴らしい』と褒めてくださったそうなのサ」と自慢げに話すマダム。うんうん、やっぱりここに来てよかった。暖かいココアが沁みました。
おわりに
飛行機で神戸に帰る。本当に2時間程度で着いてしまって、魂が追いつかない。
いやしかし、微妙な時期とはいえ、学生最後のタイミングで日本縦断という時間もカネも膨大に掛かる旅をすることができて、本当に良かったと思う。
マスクは常時着用、1人旅なのでほぼ喋らない、アルコールティシュでこまめに手の消毒…など、自分としては最大限の配慮をしたつもりなので、期を悪くされた方にはどうかご了承願いたい。
次に6泊7日もの、大掛かりな旅行ができるのはいつになるだろう。社会人になったら、有給使って2泊3日とか、3泊4日の旅行がメインになると思う(だからこそ、学生の読者には努めて長い日数をかけた旅行に1度でも行ってほしい。行っても意味がないかもしれないが、やらないほうがもっと意味がない)。
それ以上となるとリアルな話、転職活動中の暇な時間とか、退職後とかになるだろうか。結婚後は、会社以外に「奥さんの了承」という高~い壁も待っていることだろう(できるかはさておき)。
やはり、今できることは、今やる。これが僕が旅をしてきて学んだことであり、これからも覚えておきたい言葉である。
完