「スマホ中毒社会」と言われて久しい現代。
スマートフォンはあらゆることを便利にした一方、あらゆるものの価値を下げてしまったかもしれません。
そんな病的な社会を、手塚治虫はその先見の眼で、1980年代に見抜いていました。
「マイコン予測計」にすべての意思決定を委ねる
それが1982年発表の「ふたりでリンゲル・ロックを」。
舞台は1989年。SFをテーマとすることが多い手塚作品の中では、比較的近未来を舞台としています。
1980年台、実社会でもエレクトロニクスブームがやってきていたことをふまえて描かれたものらしく、「マイコン予測計」というデバイスが物語のキーとなりました。
マイコン(マイクロコンピュータ)予測計というものは、卓上電卓のような大きさで、遠近かかわらず将来に起きる出来事を予測できる、というデバイス。小売店では安価で販売され、大人も子供もみんな持っている。
みなみな、調べたいこと(行き先までの所要時間・今日の献立・将来の就職先や結婚相手etc…)について現在の情報をこのマイコン予測計に打ち込み、その結果が絶対だと信じ込んでいる。
主人公の「とうちゃんはなんでもかんでもコンピュータで決めちゃうんだよ‼」というセリフが印象的です。
マイコン予測計はスマートフォンとして現存する
…明らかに、これは現在のスマートフォン優位の社会と酷似していませんか?
どこかに行く前には?グーグルマップで到着予定時間を調べる。
料理を作る前には?クックパッドやYouTubeでレシピや材料、作り方を調べる。
就職先を選ぶ前には?マイナビやオファーサイトに登録する。
結婚相手を選ぶ前には?マッチングアプリや婚活サイトに登録する?
多くのシーンで、コンピュータの「おすすめ」に意思決定を委ねてしまっているのではないか、そうハッとさせられた一話でした。
経営者だった僕の祖父は「人間はコンピュータをコントロールする側でなくてはならない」と、僕が小さいときから話してくれていましたが…いつ、人間は自らコンピュータに隷属する側になったのだろう。
そして、改めて40年後の世界を見抜いていた手塚治虫は改めてスゴいと言わざるを得ません。
興味のある方はぜひご覧ください。