ユウのよしなしごと

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【六甲昆虫館】神戸北野にある宝石箱のようなお店で昆虫標本を買う【手塚治虫】

ある日、神戸に移り住む際に買っていた神戸の観光本を処分するためパラパラと読んでいると、ひとつのお店が目に留まった。

 

それが「六甲昆虫館」。

「北野異人館」で有名な北野エリアに、昆虫標本を扱っているお店があるらしい。

 

虫に囲まれていた幼少期

僕の幼少期はそれこそ「虫」で出来ていた。当時はデータカードダスアーケードゲームが大流行していて、その流行を率いていたのは紛れもなく「ムシキング」だった。

だから当時の子供の昆虫に対する知識量は半端じゃなかったと思う。そしてそのころのパッションは案外大人になった今でも少し残っているから面白い。

 

三ノ宮駅を降り、生田神社側に向かって登っていく。北野のあたりはかなり坂町で、当日暑かったこともありかなり疲れる。

神戸に住んで数年たつものの、北野に来たのは初めてだった。なので標識を見てこのあたりが「山本通」であることに気付き、ハッとした。

「『アドルフに告ぐ』で出てきたところだ。」

神戸にゆかりのある『アドルフに告ぐ』

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「わいら山本通のお上品なぼんぼんとは暮らしがちゃうのんや!」



僕は手塚治虫作品が大好きだ。そしてその中でも『アドルフに告ぐ』は1,2を争うレベルで好きだ。

この作品は第二次大戦~終戦の時代を生き抜いた3人の「アドルフ」が主役。

ナチスドイツの総統「アドルフ・ヒトラー」、ドイツ外交官の子で日独のハーフ「アドルフ・カウフマン」(小さいほう)、ユダヤ人の「アドルフ・カミル」という、ファーストネームが同じ3人。

神戸に住むカウフマンとカミルは親友で、何をするにも一緒だった。ただカミルはユダヤ人で、家族がパン屋を経営していたため、比較的貧しい暮らし。対してカウフマンは外交官の父を持ち、日本人の母と裕福な暮らしをしていた。


時代柄、ナチスドイツのユダヤ人迫害政策が2人の交友関係にも影を落とすようになる。

カウフマンはドイツに留学することになり、ドイツ親衛隊保安部幹部としてユダヤ人を何人も殺すようになる(こんな小さいころの絵からは考えられない残忍さ)が、「ゲルマン民族こそが優等」という思想を叩きこまれたがゆえに、自身がハーフであることに強いコンプレックスを抱くようになる。

 

とまあ、このくらいにしといて…

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やっと着いた。結構こじんまりしている。こういうレトロな建物大好きだ。

コロナの影響か暑いからか、ドアが開いている。

 

所狭しと標本が置いている。入って左はほぼチョウやガ、右はカミキリムシやカマキリとかごつい系のムシだった。

僕はこの時期山に無限にいる毛虫は嫌いだが、チョウは儚くて好きだ。そしてチョウといえば、手塚治虫作品で面白いものがある。

ゼフィルスとの出会い

それが「ZEPHYRUS(ゼフィルス)」。ゼフィルスはラテン語で、「シジミチョウ」を指す。ギリシャ神話に登場する妖精を重ねているらしい。

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終戦間際の昭和20年、昆虫好きな少年がいた。

彼の最近の目標は「ウラジロミドリシジミ」。ゼフィルスのなかでも個体数が少なく、逃げ足が速い。おまけに朝と夕方しか飛ばないらしく、なかなか取れないからこそ燃えている。

 

この漫画のストーリーは以下である。

ある日ゼフィルスを求めて畑の近くを闊歩していたところ、農夫に畑荒らしと間違えられる。

名誉挽回のため少年は夜間、畑に張り込むと、坊主頭の男が本当に畑を荒らしていた。

当時は食料も配給制のため、量は十分ではないものの食いっぱぐれることはない。事情を聞くと、その男は「配給を受け取ってない」という。彼の家には寝たきりの女性がいた。

その後、少年は山に逃げ込んだ軍人を探しているという特別警察官に会い、うっかり先の2人のことについて口を滑らせてしまう。実は坊主頭の男は女性で、寝たきりの女性とは少尉だった。2人は恋人同士で、別れの辛さに逃避行をしていたという。

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結局、ゼフィルスのいた山は空襲によりすべて焼けてしまった。地に伏せて泣きじゃくる少年の姿からは、戦争により犠牲になる自然のことを深く考えてほしいという、手塚治虫のメッセージが垣間見える。

 女性からの熱い支持

店には店長の方と、そのアシスタントのような方がいた。とてもイケメンだった。

 

僕がチョウを見ていると店長さん(館長さんのほうが適切か?)が優しく話してくれた。

チョウとガはほとんど変わりはないこと、ウラジロは大阪の三葉山にいること。

 

そしていちばん驚いたのが、こういった標本に興味を持つのは女性の方が多いらしい。

とりわけ、チョウより蛾の方が人気らしい。えっ、なぜ?

 

理由を聞くと、「モフモフしたものが好き」という理由に尽きるのだとか。確かに蛾の方がモフみはある気がする。

つまりはネコやワンコを同じ感覚らしい。結構びっくりした…

 

現に来客の7割は女性みたい。バンギャとか多いって。

まあ確かに、「岡奈ななこ」とか胸元にチョウのタトゥーしてるもんね。

 
 
 
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 衝動買い

特段、なにか買うつもりで来たわけじゃなかったが、「モルフォ蝶」というチョウの標本になにか心を奪われてしまった。

 

 

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お迎えしました。完全に衝動買いである。

 

奇抜だけど、天然な青だから不思議。

モルフォ蝶は「構造発色」という方法でこの青を実現しているそう。羽の構造により、自然界の青の波長を強く反射するようになっているのだとかで、CDと同じ仕組みらしい。

なので傾けたりすると青が濃くなったり、淡くなったりする。

 

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最近はテレワークブームで、僕も家で作業することが多くなった。

植物をデスクに置くと作業効率が上がるというニュースを見たので、花や植木でも買おうか考えていたが、モルフォを置くことにした。

美しいものが家にあると、自信が湧くという効果もあるみたい。

 

気まぐれで行った六甲昆虫館だったけど、行ってよかった。

これからも訪れてみたい。